± +α1−4 SUB TITLE 天上天下唯我独尊 処置室のイスに座ったまま、替えのシャツを着こむタケヒロ。 その姿をじーっと隙間から覗く。 「…入ったらどうだ?」 「きゃ☆バレてる!着替えるまで待ってようと思ったのさ。 見つかったので入りまーす!」 「……相方は?」 「さっき叫び声が聞こえたからどっかに……」 「ぎゃーっ!たーすけてー!!!」 聞き覚えありまくり☆の悲鳴に、タケヒロとバルは顔を見合わせて部屋を出た。 廊下を跳ねて進んできた液体をバルは手に取る。 「モッ、モスラがっっっ!」 カストが指差すT字路の先を、鼻歌まじりに何かが横切っていった。 シルエット的にはチョウチョの羽っぽい気がした。 「仰ちゃんが孵ったの!」 「孵るって、じゃあ今までのは卵だったの?」 絶句する液体を手の中でお手玉してみる。 遊び出すバルにタケヒロは斜め上から目線を下ろした。 「……で、用件は?」 「ああ、僕?……えっとね、……なんだっけ?」 「分かった!恋の悩みだわん」 当然と会話に入るカスト。形はハート型をしていた。 「恋ねえ、恋……」 「濃い」 「故意」 「鯉……ピチピチっ!」 (視線は二人ともタケヒロです) 「………」 タケヒロは無言で日本刀を床に刺し、活造り実演中の二人を床ごと引っくり返す。 「俺に対するあてつけか!それともおちょくってるのか!クソガキ!!」 「わーっ!!!タケがキレたぁーっ!!!」×2 ダッシュで逃げまくる少年と液体を日本刀を振り回して追いかける青年。 鬼ゴッコって本来こういう物だよね。 「……いったかな?」 「行ったみたい」 廊下を走り抜ける靴音が遠くなるのを待って、バルとカストはベットの下から這い出た。 鬼ゴッコってかくれんぼにレベルアップするよね。 「……しっかし良く寝てるね!この人」 ベットの上で寝ている赤毛の男には、体を覆うようなシートがかけられていた。 バルは出ている頭をつっついてみる。 「斬られてたしね。私もだけど」 「……君の半分ドコいったのさ?」 「溶けて逃げてく時に持っていったみたい。凍らされると動かせなくなるの」 「アレなんだったの?大事な物?」 「……マジな話の途中で悪ぃけどさ、人の顔に落書きしねーでくれ」 寝起きの瞳に最初に飛び込んできたのは、黒いペン先とそれを持つ少年。 バルはニヤっと笑って、 「起きた?もうちょいで出来るよーん」 「ちゃん目(瞼に)とヒゲ書いてね、バル」 「定番でしょ♪」 「やめいっ!人が動けねえのをいい事に好き勝手すんなっ!」 「ケッケッケ、寝てる奴と骨折した奴には落書きしてもいいもんね」 「そーそー、法律で決まってるのよ!」 「……キングだからって安心してんなよ? 動けるようになったらまず頭に穴開けてやるぜ、カスト!」 「きゃーん!謀反でーっす!ララ姉に言いつけてやるわ」 「テメエッ!」 「にーげろーっ!」 落書きを完成させてから、 バルとカストはタケヒロが向かった逆方向に部屋を出ていった。 暫くして、再度研究室のドアが開く。 「今ここに………いたみたいだな」 「ご名答、つーか待て!そのまんま行くなっ! 動けねーんだ。落書き消していけ!」 「……がんばれ」 「おいっ!」 閉じられたドアにLEVは息を落とした。 とりあえず油性じゃない事を祈ろう。 「ねえー、続き」 廊下を当ても無く進みながら、バルは頭上の液体を見上げる。 「半分のこと?アレはグランドマザーのカ・ケ・ラ」 「可愛くないよ」 「ぶーぶー!」 「おばあちゃんね。ウォータ・ファーストかー、人魚とは知らなかったね」 「ダディが生まれた時に……わーっ!来たーっ!!!」 頭の上で、悲鳴が響く。 振り返ると日本刀を右手に抜いたまま走ってくる男。 「きゃー!早いーっ!追いつかれるぅ」 「ぜっっったい!逃げるだけって体に悪いってばっ!」 「はわわわっ!息が聞こえるーっ!」 「……人を融合体(ダーク○サイヤ)みたく言うなっ!」 危険な殺人術を駆使するタケヒロの刃をかわして行くバルに、 液体固形物はふと叫びたくなった。 「素早さが1上がった!バルは回避を身につけた!」 「……置いてくよ?」 「すいません。大人しくしてます」 タッタカターと逃げの一手を決め、廊下を走り抜ける少年に、 タケヒロは刃を肩に構えた。 お得意の真空刃だが、もちろん傷つけるつもりはない。 でも当ったらゴメンね、ぐらいの軽い気持ちですな。 「それはナシじゃないの!?」 「嫌なら逃げるな」 「追うから逃げるんじゃん!」 柄を絞った手が只ならぬ気配を感じて止まる。 てふてふてふてふ…… 廊下の先から奇妙な音が聞こえた。 近づいてくる姿に、タケヒロ含め全員が見なかったことにした。 てふてふてふてふてふてふてふ! 壁にぴったりと寄って、彼が通りすぎるのを待つ。 ひたすら待つ。 てふ? 「止まらないでよ……」 「いやーみなさん止まってますから……」 「分かった、僕らが去りますっ!」 一斉に逃げ出す3人を、背中にアゲハ蝶の羽(等身大)をつけた仰が追いかける。 もちろん、浮いてます。 てふてふてふてふてふ!(←羽音だったらしい) 「隊長!来ました!モスラが来ましたっ!」 「何で追いかけてくるのさぁーっ!」 「だって、逃げるから」 すんごい速さで羽をパタつかせる仰ちゃん。 鬼ゴッコの鬼は交代したようです。 「…そいで?ダディがどうしたって?」 バルは走りながら頭上に話しかける。 「今言うの?」 「キミ暇でしょ」 「そりゃ乗ってるだけですから! ダディが生まれた時、セイレーンの一部を持って出ちゃったの。 (私はさらにそっから分かれたのよん) だから私にもセイレーンの部分が混じっちゃったりしてます!」 「アイツが持ってったのはセイレーンの部分?塊であるの?」 「私が分けたの! 自慢ですが私はエビアンと南アルプス天然水が混ざっても分かります!」 「すごい力だけど意味なさげ」 「ヒドイ!覚醒する(思い出す)まで使えなかったのに!うわーん!」 「忘れてなの?」 「えぐえぐ……ううん、力を含んだ水って意識が溶けやすいらしいの。 思い出したのはUとTの記憶よ。 国の歴史とかがそれぞれの視点で見えるの。 ……ミノルさんの事とかもね」 「……普通、そういう話は座ってやらないか?」 後ろで話を聞いていたタケヒロは、逃げるのに飽きてきたのもあって1人足を止めた。 「わははははっ!タケ、つーかまーえたっ!」 スパ……! すれ違いざまに蝶の羽は刃で切断された。 「やーらーれーたー……ってビックリしました?」 「うわおっ!?」 一度倒れて、瞬時に立ち上がった仰にビクつく少年と液体。 バルは落ちている羽を拾って、すぐ床に叩き付けた。 「紙じゃんコレ!作るな、こんなもん!」 「仰ちゃん、なぜにチョウチョ?」 「普通の羽だとつまらないじゃないですか」 「……羽が生えた時点で十分面白いよ」 紙製の蝶の羽の下には、小さな金の羽が生えていた。 本当の羽はこっち。チョウチョの物は光った瞬間に、コンマ数秒の動きで作ったらしい。 手作りとは相変わらずマメな方。 「力の使いすぎで、本性を曝け出すことになっちゃいましたね。 そうなんです!実は私は………ぐう(-_-)ZZZ」 「寸止めかい!」 「冗談ですよ。私は見ての通りの天使です」 「………」 光をまき散らし飛んでみせる青年を残して、無言のまま去ってゆくバル。 表情には夕陽に照らされたような斜め線を入れていた。 「……仰、それは……」 「あれ?信じてないですか?」 屈託のない笑顔に、どちらでもいいかという心境になる。 というかツッコミに疲れた感がある。ボケ率高すぎ。 「まあいい。とりあえず今回の件、介入してもいいか?」 「もちろんです。彼女はあなたでなければダメでしょう? 残念なことに、人のものに手を出す趣味はありませんので。 というよりも、スウさん以外は目に入ってませんから! すみませんね。こちらのいざこざに巻き込んでしまって……」 カナを含め、と仰は詫びを入れる。 日本刀を静かに鞘に収めるタケヒロ。 「……色々と詳しく話を聞きたい」 「承知しました。では、重要参考人を捕まえに行きますか♪」 優しげな微笑をたたえる仰ちゃんは指を鳴らした。 今度はケードロ?(警察vs泥棒ゲーム) ほふく前進で進む小型ランボー(顔にペイントと両手に木)と、 頭上で透明化する液体プレ○ター(シュワちゃん出てます!実は2もある) 「フッフッフ、これでどうだ……?」 「フォフォフォッ、私がどこにいるか分かるまい」 得意げに笑っていると、後方から現れた2人組に気付き、伏せた。 「………」 「……へっくし!」 頭の上で加藤茶バリのくしゃみがした。 「わーっ!なんであんたはそうなのさっ!?」 「ゴメーン!静かにするの苦手なのよっ!」 「……バル、その前に白い所で迷彩着ても意味ないと思うが」 壁も床も天井までも白い、廊下で逆に目立ちまくっている。 透明な液体はくしゃみした瞬間に、力が抜けたので水色に戻っていた。 「てへ☆」 にへら、と笑ってから逃げ様とする少年の裾をタケヒロは踏みつける。 逃げられない!というテロップを流す液体。 タケヒロはボスクラスらしい。 「鬼ごっこは終わりだ。話がある」 「はーい」 バルとカストは観念して遊びを中断した。 メンバーは場所を移し、重役会議室に集まった。 (一人、病欠です) 水色の首相とララも同席する。 スウさんは店があるので帰りました。 さみしんぼな仰ちゃんは床にのの字を一杯書いています。 ソファーに腰掛けたまま、バルは頭上の液体を見上げる。 「さて、今後はどうしますか?」 「とりあえず怪我人を治します!」 「だってさ、タケちゃん」 「……俺だけじゃないだろう?ララ・エクストラ」 「悪いけどアイツは直ってないわ。てゆーか直してない」 「出さないのか?公安の仕事だろう?」 「色々とね……めんどいのよ」 口を紡ぐ白衣の女性に誰もそれ以上追求はしなかった。 変わりの首相がその水色の唇を開いた。 「王、私が変わりにご説明してもよろしいですか?」 「お願いします……ぺこり」 「それではまず、彼の事について。 ミノルはUの護衛でありながら、その恩恵も地位も捨てた者です。 ですが、その原因は任務にありました。 そばに居すぎた為か、類い稀なる魔力が災いしてか、 彼はUと記憶を共通してしまったようです。 同調したミノルはセイレーンの記憶を錯覚したでしょう。 セイレーンと共に過ごしたかのように……。 そして彼はより強い記憶を求めました」 闇の中に、壁から水色の光が発色されている。 水のように揺らめき、月のように陰る妖しい輝きを放つ中心には、 氷付けのマーメイドが眠っていた。 抱き寄せたい衝動を殺し、少年は褐色の胸元をはだけさせた。 呼応するのか、体の真中に埋め込まれていた水色の水晶は脈打つ。 「……何の為にUをこの身に宿したのか、 誰の為に祖国を裏切ったのか……全てアナタの為だよセイレーン。 Uを、純粋なる水の血脈をこの身に宿し、水の魔力を手に入れたが、 身体に及ぼす影響は激しくて、僕は精神さえも幼年期に逆戻りだ。 でもおかげでアナタの意識がこんなに近くに感じられる! 僕はもうアナタしか分からないよ。アナタしかいらない。 さあ、目を開けて。これが最後のピースだ」 手に現れた水色の氷を、ミノルは人魚に埋め込んだ。 この光景、傍らでただ見つめる新緑の瞳にはどう写ったのだろうか? 「記憶欲しさに体に埋め込んだの?うっわー、純愛ここに極まりってカンジ。 でもあんだけの力持ってて回りくどくない?」 「さっさとコレを誘拐すれば早かったろうな」 これと矢印が刺さった液体固形物。 ぞんざいな王の扱いに、首相は水色の瞳を和ませながら質問に答える。 「セイレーンの封印を解くには彼女の破片を全て集めなければなりません。 ですが溶けた水と水の区別を付けるのは容易ではない事。 カストロールの覚醒(記憶に伴う力の使い方)は絶対条件でしょう」 「記憶喪失の一番の直し方はショック療法ってワケ?」 「そうゆうことです。 ミノルは直ぐにでもセイレーンを起こすでしょう。 彼女の力は絶大です。Uやカストロールさえ凌ぎます。 そうなったら我々は彼女に吸収されてしまうでしょう」 「おいどんもですたい!」 「それは九州って、何っ!?君もっ?」 「うん」 「何でそんな大事なことをさっさと言わないんだぁーっ!!!!」 「むぎゅぎゅーっし、絞らないで!」 雑巾絞りされる液体をよそに、タケヒロはソファーに凭れていた背を起こした。 「セイレーンが目覚めるのにはどれくらいかかる?」 顔つきを変えた他国の暗殺者に、仰は忍び寄る。 「開封の時間は氷の溶ける時間、特殊な物なので3日程かかりますねえ。 その間に傷を治してください。今回はフォロー出来ないと思いますからね」 「……余裕も時間もない、か」 「せめてもの救いはあなたが味方であることですね」 「あまり他人を信用しない事だ。俺は所詮、外の者。 いつ裏切るか分からんぞ?」 「大丈夫ですよ。そっちは私より人を見る目がありますからね」 笑顔の向かう先には、ジャレ合う動物の耳を生やした少年と水色ゼリー。 「………」 「あっ!思い出した。タケちゃん、1個お願いがあっちゃったりする」 バルはタケヒロを訪ねた理由を述べた。 「あのさ。この中の誰かが殺されたら僕はあの人を殺すよ。どんな手を使ってでも」 「……ああ」 「でも僕が殺られてもあの人を殺さなーいで」 「……ものすごいワガママだな」 「子供だもーん!」 「カナはお前と何の関係がある?」 少しワザとっぽい口調に彼の本心が見え隠れする。 でも期待していた答えはあっさりと否定された。 「知らないよ」 「をい」 「ただもったいないじゃん。あんな綺麗な人、初めてみたよ! それになんか……ワケありっぽいし」 バルは神秘的なグリーンの瞳を思い出す。 あの感情のなかった目が、綻ぶ姿を知っているような気がした。 静かに背もたれに体を戻し、タケヒロは本音を洩らした。 「俺だけではカナを止められない。手伝ってくれるか?」 唯一カナが反応を示した少年は、たっぷりの余裕でこう答えた。 「僕は高いよ☆」 「金取るんかいっ!」 どこらから出した電卓を巧みに操るバルに、頭上の液体はツッコむ。 「当然でしょ!僕は僕だけの為に働くもん!」 真剣に時給で計算するバルに周囲は汗を流す。計算細かいです。 自分の為と、他人の為。完全に相反する2人の少年は、 この国の創立者・人魚セイレーンの前で対峙することとなる。 ショウリ ノ メガミハ、ドチラニ ホホエム? 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