パパパパーパーパー、パッパパー!
出口を開けた途端に、けたたましいトランペットの音が鳴り出した。
真っ白な壁と、豪華な装飾の施された柱の広々とした部屋に、扉は繋がっていた。
両脇に制服を着たマシン兵が立ち並び、その後ろで一般の軍人が勝利の曲を奏でている。
大理石にの床には赤い絨毯、窓には紋章のステンドグラス、そして、正面には国旗が掲げられていた。
間違いなくこの国の王の居間、王宮。
だが、城は街の中心にそびえている。こんな砂漠の真ん中ではない。
「ちょっと空間をリンクしてあるんですよ」
「ちょっとって……」
「大したことないです。あはは♪」
勝手に進む仰に、イマイチ現状が掴めないバルはタケヒロを見上げた。
動物の耳が動く。張り詰めた雰囲気に声をかけられなかった。
「とまれ、王の御前である」
誰も居ない王座の左右には、兵とは違う服装の、この国の要人が控えていた。
右から、ヒゲをたくわえた屈強な軍服の男。
名をラーク・セビラス。国王の親類にあたり、軍の総司令官である。
命令したのはこの男だ。
その横に白衣姿の女性と、髪の長い細身の男性。
仰は言葉に従い、素直に跪いた。
「…我、古の契約により、次期王の選別を行う者なり。仰、以下3名。土と、風と、火の三大要素を似て新たなる王の守護者とならん。
3つの門より蘇る我唯一の王は……永遠の友、ウォータの名と加護を継ぐ者。カストロール・ウォータIII(サード)なり」
タケヒロが瞼を閉じ、日本刀を握る手に力を込めた。
頭の上でてへっと笑って見せるカストをバルは引きずり降ろし、眼前にもってくる。
「どーゆーこと!?僕、聞いてないよぉ!」
「だってー言っちゃだめーって」
「説明しろー!」
バルは雑巾絞りされても吐かないカストに業を煮やし、振り回してやる。
重臣達が慌てふためく。
それもそうだ。自分達が仕える王様が細く伸びながら頭上を巡っているのだから……。
「フン、人形や他国の暗殺者、それにどこの奴かも分からないコイツらがか……」
悪態をつく軍服の男に向けた視線を、仰は眼鏡で遮った。
後ろの会話を聞こえないフリをして。
「………おい」
「ああ、どうぞ。止める気しねーわ」
「そうか………」
鍔なりのする刀に、重々しい空気が漂う。
持ち手により、その力を変化させる無二の武器。
タケヒロはためらいもなく、バルが振り回す水色の物体を狙った。
バルは音もせず、手の物が軽くなるのを感じた。
伸びた水色の物体が一瞬でコマギレになりながら、ばらまかれた。
その瞬間、ヒゲの生えた口許がほころんでいた。
「……とう!」
散り散りになった破片が1ケ所に集まり、あっと言う間に王復活。
あっけにとられる兵と要人達。
右手に刀を携えたまま、タケヒロは仰の横を通り過ぎた。
「任務不実行につき、クライアントの意志を確認したい。……ラーク・セビラス殿」
「バッ馬鹿な!何を言っておるのだ!」
声を荒げる司令官に周囲から注目が集まる。
「私がこの殺し屋を雇ったとでもいうのかっ!?ふざけるな!そんなコトして私に何のメリットがある?第一、他国の飼い犬の世迷言を誰が信じるというのだ!
……LE、貴様何のためにここにいる?即刻こやつを排除せよ!」
「やなこった」
「何!?」
「頭イテーし、心臓イテーし、ヤル気ねぇ」
「っ!使えん兵器だ。貴様などさっさと廃棄すれば良かったものを!」
「恩着せがましいな、元々プロジェクトは凍結してただろうが!」
脅しを交えてみてもLEVの態度は変わらない。
火をつけたタバコをくわえ、銃を向けた。
セビラスが手を上げる。
合図に左右のマシン兵が一斉にマシンガンを構える。
「…だーかーらー、僕関係ないってー、ねえ、聞いてる?」
戻ったカストを連れて、バルは仰の後ろに隠れた。
仰は何かを企んだ顔をして、すっくと立ち上がった。
「…セビラス殿、アナタは何故タケヒロが暗殺者と分かったのですか?」
「そんなもの!見れば分かるだろう!」
白衣を着た女性がその言葉に反応する。
「…指令、お言葉ですが、彼の入国は報告しておりませんよ。混乱を避けるためLEVを使ったのは、私の独断です」
「う、嘘だ!剣を持った男が王を狙っていると………」
「へー噂って顔まで分かるんだー僕知らなかった〜」
バルが反論する。
白衣の女性が軍服の背中を蹴り押した。
「司令官殿、アンタも男なら勝負して生き残ってみな」
「くっ……」
顔を歪ませ、セビラスは懐の拳銃を抜いた。
キンッ……!
日本刀が鞘に収まる音。
タケヒロの指先を伝って血が流れ落ちる。
加減無しで振った右腕の傷が開いたようだ。
男の視線が揺れる。
セビラスは何かを言おうとしているが、声が上手く出ない。
男の体に黒いスジが格子状に入り、ぼろぼろと崩れた。
四角の肉片になってから、セビラスはやっと血を流せた。
「……クライアント死亡により、任務完了」
冷たい視線を依頼主に送り、仕事を終了させる。
非道な空気は、本来の彼が持っているモノだろう。
正義を気取るわけではない。どんな悪党の始末でも自分を悪く見せる。
それはプロとしてのプライド。殺し屋の鉄則だ。
「はいはい、終わりよ。全員撤収して」
白衣の女性が手を叩き、マシン兵を退かせる。
その横の長い髪の男が、前に進みでた。
仰の後ろで、カストを頭に乗せたバルが警戒した目で睨む。
白い水色の髪を揺らして男はバルと視線を合わせるため膝をついた。
「王をよろしくお願いします」
「へ?」
にっこり笑ってから立ち去っていった。
疑問だらけで混乱するバルの前では、仰ちゃんがにんまり笑っている。
「ねーバルー」
「どした?カスト」
「あっちー」
液体が指差した方では、
「いやーすっげーわ。体動くならマジやりてー」
「…別に今でも俺はかまわんが………」
「へー、余裕じゃーん」
2名程、戦闘体勢に入っております。
「……あんのバトルマニアどもめ」
いいかげんにしてーと呆れるバル。
血まみれで対峙する2人の間に白衣の女性が割って入っていった。
先程とはうって変わって、鼻ピアスにチェーンを通し、耳にはいっぱいの輪ッか埋め尽くしていた。
固い仕事が終わったので付け直したらしい。
「ちょっと来なさい」
襟首をつかんで両名を連れていく。途中仰ちゃんに断わりをいれた。
「仰、こいつら医療班に預けておくから取りに来て」
「分かりましたー」
文句言いながら連れていかれる2人。
「ララ!放せこら!」
「…何で俺まで………」
「うっさいわ!心臓にクランク(亀裂)入れた状態で何いってんの!アンタも血ィ垂れ流して!純粋な人間様は随分気前がいいことで!コレ以上暴れたいんなら私が相手してやるつってんだろっ!」
「……遠慮しておきます」
消えていく2人を見送ると仰はバルに言った。
「も、1個来てほしい所があるんですけど……」
「全っっっっっっっ部、説明してくれるんなら良いよ」
「スリーサイズまでは無理ですけどね」
横で、3つもサイズが無いことにショックを受けるカストロールがいた。






◆前にいくー!◆
★次ー!★





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