資料をバラまいた、豪華な机をララは力任せに叩いた。 「それでは殿下っ。あなたは認められないと?」 「認めるも何も破棄は決まっている。しかも今回の不祥事、軍法会議モノだ。君も物好きだな、実の姉を殺した兵器を使おうとは……」 「姉が何の為に体を張った?そんなコトも分からねぇで良く司令官やれるな」 「貴様!」 「あんた達が一番恐れる暴走は絶対起こらない………私のクビを賭けてもいい、あのコは完璧な兵器だ」 回りの助手達が慌ただしく動く。 彼女の研究室に運び込まれた1体が目を覚ましたのだ。 ベルトでベッドに縛りつけされているにも拘わらず、起き上がろうと暴れる彼の左腕からは、大量の血がまき散らされていた。 「鎮静剤」 「でも、博士。4本目ですよ……」 「気にするな、このコはマシン兵と同等に扱え」 「っ……やめろララ!……オレはこんなモンっ!」 「あんたは寝てな」 ララは持ち上がる赤い頭を手で掴み、ベッドに打ちつけた。 左腕に注射針が入るのを感じた。 「あんたがどんだけ抵抗しても、私はあんたを殺さない。姉さんが命賭けた理由、考えな」 「どう……ゆう……」 薬と出血のせいで視界が霞む。 「……メタル・ドールの破棄を姉さんは最後まで反対してた。けど、暴走の危険性はないとは言い切れない。確かめたかったってさ」 「…………」 「姉の遺言。つーかそっち行く前に話してたコトなんだけど。もし私と対峙して生き残ったヤツがいたら、そいつはカンペキな完成品のLE。 だから絶対に破壊させないで、妹のあんたが面倒みてよ。って」 腕を失い、兄弟と母親を手にかけて、それでも自身を見失わない。 死を目前にしても精神状態を保つことのできる、完全な兵器の誕生を、彼女は見たかっただろう。 (何だよ、結局…最後まであんたの手の内かよ) 閉じる瞼の裏には笑顔のロー・エクストラの姿が写っていた。 診察台の上でビィが眠るのを確認した後、ララは銀のケースを助手達に運ばせた。 その鍵に付けられているタグには、LEVと書かれてあった。 灰色の世界に、両腕をマシン兵にガードされた赤い髪の男が足を踏み入れた。 地下で、しかも一切の空調なしの部屋。 男はツナギを腰まで下ろして、中のTシャツを脱いだ。 銀色の左腕と、完全にメタル化された左腕。 違和感のない銀の腕を鎖に繋ぐと、マシン兵は独房のオリを閉めた。 LEナンバー メタルドールプロジェクト……………凍結。 1ヶ月後、大戦は終わりを告げる。 全ての国民が沸き立ち、軍人とマシン兵が功績を讃えられる中、最大の功労者であるメタル・ドールとその開発者は、誰1人としてその表舞台に立つ事はなかった。 これより数年間、犯罪専用の機関に移籍した彼は、その公安の任務の他に、年に1回だけ、鎖を解かれる日があった。 朝焼けのする中、花束を持って墓地に訪れるLEVの姿があった。 終わりv ●戻るー!● ◆前にいくー!◆ |
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